車が全損になり、保険会社から提示された金額を見て「これでは同じ条件の車に買い替えられない」「ローンだけが残ってしまう」と困っていませんか?
結論からいうと、全損でお金が足りないときは、まず不足している原因を確認することが大切です。相手方保険会社が提示した時価額が市場価格より低い場合は、根拠を揃えて増額を求められる可能性があります。一方、ローン残高や自分の車両保険の上限が原因の場合は、時価額の交渉だけでは不足を解消できません。
この記事では、全損で保険金が足りなくなる5つの原因を切り分け、それぞれに合った対処法を解説します。
この記事での「保険金」について
検索時に使われる言葉に合わせて「保険金」と表現していますが、相手方の対物賠償保険から支払われるお金は損害賠償金・示談金、自分の車両保険から支払われるお金は保険金です。両者では算定方法や手続きが異なります。
全損で保険金が足りない5つの原因
「保険会社の提示額が低い」と感じても、原因によって取るべき行動は異なります。まずは、どのケースに当てはまるか確認しましょう。
| 足りない原因 | 主な対処法 | KKリサーチとの相性 |
|---|---|---|
| 相手方保険会社の時価額が低い | 市場価格を調べて再算定を求める | ◎ |
| 買い替え諸費用が含まれていない | 見積書を項目別に提出する | ○ |
| 過失割合・免責金額・事故車の残存価値が差し引かれている | 明細と算定根拠を確認する | △ |
| 自分の車両保険の上限が低い | 契約内容と利用できる特約を確認する | × |
| ローン残高が車の時価額を上回っている | ローン会社へ精算方法を確認する | △ |
KKリサーチの車両価値調査が特に役立つのは、相手方保険会社から提示された時価額が実際の中古車市場より低いと考えられるケースです。ローン残高が多いことや、自分の車両保険の契約上限だけが原因の場合は、車両価値を調査しても不足が解消されない可能性があります。
原因1:相手方保険会社から提示された時価額が低い
相手方保険会社から提示された金額では同等条件の中古車を購入できない場合は、時価額の算定根拠を確認しましょう。
交通事故における車両の時価額は、一般的に、事故直前の車と同じ車種・年式・型式で、走行距離や使用状態も同程度の中古車を市場で取得するために必要な価格を基準に考えます。購入時の新車価格やローン残高が、そのまま賠償額になるわけではありません。
参考:日弁連交通事故相談センター「修理費が車の時価を超えるとき(経済的全損)の賠償額」
レッドブックなどの算定資料を確認する
車両時価額を算定する際の参考資料の一つが、有限会社オートガイド発行の「自動車価格月報」、通称レッドブックです。
レッドブックは、中古車市場の膨大な情報から、車種・年式・型式などに応じた標準的な価格を予測算出した業界向けの資料です。レッドブックの価格が必ず不当に低いわけではありませんが、走行距離や装備、地域の流通価格など、事故車両の個別事情が提示額に十分反映されていない場合があります。
参考:有限会社オートガイド「RED Book(レッドブック)とは」
示談前に算定根拠の開示を求める
提示額に疑問がある場合は、示談書へのサインをいったん保留し、次のように伝えましょう。
提示された時価額では同等条件の車を購入できないため、現時点では示談に同意できません。使用した価格資料や比較車両、走行距離・グレード・装備などの評価内容をご提示いただけますか。
一度示談が成立すると、後から金額を変更してもらうことは原則として非常に難しくなります。疑問が解消してから判断してください。
同等条件の中古車価格を調べる
大手中古車情報サイトなどを使い、事故車両に近い販売車両を3〜5台程度探します。
- 車種・型式・グレード・駆動方式
- 初度登録年
- 走行距離
- 修復歴の有無
- 車検の残り期間
- 主な装備
- 販売地域
最も高い1台だけを根拠にするのではなく、条件が近い複数台を比較します。掲載ページは削除されることがあるため、掲載日が分かる状態でPDF保存やスクリーンショットをしておきましょう。
原因2:買い替え諸費用が含まれていない
全損により車を買い替える場合は、車両時価額とは別に、登録・車庫証明・廃車の法定手数料など、買い替えに伴う相当な費用が損害として認められる場合があります。
ただし、中古車販売店の見積書に記載されたすべての費用がそのまま認められるわけではありません。税金の種類、代行費用、納車費用などは、事故や買い替えの内容によって判断が分かれます。
車両本体価格と支払総額を分ける
中古車サイトの「支払総額」には、車両本体価格だけでなく、登録などの諸費用が含まれていることがあります。
支払総額を車両時価額として主張したうえで、同じ登録費用を別に請求すると、二重計上と判断されるおそれがあります。交渉資料には、次の項目を分けて記録しましょう。
- 車両本体価格
- 支払総額
- 登録・車庫証明などの諸費用
中古車販売店から買い替え車両の見積書を取り、費用を項目別にして保険会社へ提出することが大切です。
原因3:過失割合・免責金額・事故車の残存価値が差し引かれている
車両時価額そのものが妥当でも、過失割合や免責金額などによって、実際に受け取る金額が少なくなることがあります。
自分にも過失がある場合は賠償金が減額される
相手方へ請求する損害賠償金は、自分の過失割合に応じて減額されます。
例えば、認められた車両損害が100万円でも、自分の過失が20%なら、相手方へ請求できる金額は原則として80万円です。提示額を確認するときは、車両時価額だけでなく、過失割合を適用する前後の金額も確認しましょう。
自分の車両保険では免責金額が差し引かれる場合がある
自分の車両保険を使う場合、契約に免責金額が設定されていると、その金額を自己負担することがあります。ただし、全損時の免責金額の扱いは保険商品や約款によって異なるため、加入先へ確認してください。
事故車を手元に残す場合は残存価値を確認する
全損となった車にも、スクラップや部品としての価値が残ることがあります。相手方からの賠償で事故車を手元に残す場合は、その残存価値が賠償額から差し引かれることがあります。
保険会社の明細に「残存価値」「スクラップ代」「残価」などの項目がある場合は、金額の根拠と事故車の引き取り先を確認しましょう。
原因4:自分の車両保険の契約上限が低い
自分の車両保険から受け取る保険金は、契約時に設定した車両保険金額や約款が基準になります。そのため、中古車市場の販売価格が上がっていても、契約上限を超えて支払われない場合があります。
相手方保険会社の時価額に対する交渉と、自分の車両保険の支払いは仕組みが異なります。まずは保険証券や契約者ページで、次の項目を確認してください。
- 車両保険金額
- 免責金額
- 車両新価特約の有無
- 車両全損時諸費用特約の有無
- 車両全損時復旧費用に関する特約の有無
車両新価特約
車両新価特約は、契約車両が事故によって一定以上の大きな損傷を受けた場合に、新車の再取得費用などを補償する特約です。対象となる車の経過年数、損害の条件、支払限度額は保険会社によって異なります。
車両全損時諸費用特約
車両全損時諸費用特約は、車両保険金とは別に、全損後の買い替えなどに備える費用を上乗せして支払う特約です。
実際にかかった登録費用や税金がすべて支払われるとは限らず、車両保険金額の一定割合や定額で支払われる商品もあります。名称や支払額は保険会社によって異なるため、約款を確認してください。
相手方からの賠償金と自分の車両保険について
同じ損害について、相手方からの賠償金と自分の車両保険金を重ねて受け取り、実際の損害額を超える補償を受けられるとは限りません。支払額の調整や保険会社による代位が行われる場合があるため、両方へ請求するときは自分の保険会社へ確認してください。
原因5:ローン残高が車の時価額を上回っている
ローン残高は、事故直前の車の市場価値とは別の問題です。車両時価額が適正でも、ローン残高の方が多ければ「車はないのにローンが残る」状態になることがあります。
まず車検証の所有者とローン契約を確認する
ディーラーローンやクレジット会社のオートローンでは、完済まで車の所有者が販売店やローン会社になっている場合があります。これを所有権留保といいます。
所有権留保のある車が全損になった場合は、一括精算を求められたり、保険金をローン返済へ充てたりすることがあります。ただし、精算方法や保険金の受取先は契約によって異なります。
- ローン会社へ事故と全損の連絡をする
- 一括精算額を確認する
- 保険金の支払先と必要書類を確認する
- 不足分の返済方法を相談する
参考:トヨタファイナンス「契約中のクルマが事故全損や盗難の場合」
ローン残債だけが理由なら時価額調査で解決しない
保険会社の提示した時価額が市場価格と比べて妥当であれば、ローンが残っていることだけを理由に賠償額を増やしてもらうことは困難です。
一方、提示された時価額自体が市場価格より低い場合は、再算定によって受取額が増え、ローン不足額を減らせる可能性があります。ローン残高ではなく、まず車両時価額が適正かを分けて考えましょう。
時価額が低い場合はKKリサーチの車両価値調査を検討する
自分で中古車サイトを調べても、年式・走行距離・グレード・修復歴・地域差などを調整し、保険会社が検討しやすい資料にまとめるのは簡単ではありません。
KKリサーチでは、車種・年式・走行距離・装備・車両状態などを確認し、市場データに基づいた車両価値の調査レポートを作成しています。
特に、次のような人に向いています。
- 相手方保険会社の提示額では同等車を購入できない
- 同じグレードの中古車が少なく、比較が難しい
- 年式の古い車・希少車・輸入車・カスタムカー
- 中古車情報を提出しても再算定を断られた
- 保険会社へ提出できる客観的な調査資料を用意したい
まずは無料査定で、現在の提示額と市場価格にどの程度の差がありそうか、正式な調査を依頼する価値があるかを確認できます。
KKリサーチが向かないケース
ローン残高が多いことや、自分の車両保険の契約上限だけが不足の原因である場合は、車両価値を調査しても受取額が増えない可能性があります。また、KKリサーチは車両価値の調査資料を作成するサービスであり、保険会社との法律上の交渉を代理するサービスではありません。
調査を依頼しても必ず提示額が増えるとは限りません。弁護士費用特約で調査費用を補償できるかについても、正式依頼前に加入先の保険会社へ確認してください。
自力での交渉が難しい場合の相談先
弁護士費用特約を確認する
相手方保険会社との交渉が進まない場合は、自分や家族の自動車保険に弁護士費用特約が付いていないか確認しましょう。
追突事故など自分に責任がない10対0のもらい事故では、自分の保険会社は相手方との示談交渉を代行できません。弁護士費用特約を利用できれば、弁護士への相談や交渉依頼にかかる費用が補償される可能性があります。
補償上限や対象費用、事前承認の要否は契約によって異なります。弁護士や調査会社へ依頼する前に加入先へ確認してください。
日弁連交通事故相談センターなどへ相談する
弁護士費用特約がない場合は、日弁連交通事故相談センターなどの相談機関を利用する方法があります。同センターでは、交通事故の損害賠償について弁護士による無料相談を受けられます。
一定の条件を満たせば、物損事故について無料の示談あっせんを利用できる場合もあります。相手方が加入している保険会社や事故の状況によって対象外となることがあるため、利用条件を確認しましょう。
全損になった事故車を売却・処分するときの注意点
全損と判断されても、事故車を自由に売却できるとは限りません。処分する前に、車検証上の所有者、保険会社、ローン会社へ確認しましょう。
相手方から賠償を受ける場合
相手方の対物賠償保険から支払いを受けただけで、事故車の所有権が自動的に相手方保険会社へ移るとは限りません。
ただし、事故車を自分の手元に残す場合は、スクラップ代や部品価値などの残存価値が賠償額から差し引かれることがあります。事故車を誰が引き取るのか、残存価値をいくらと評価しているのかを書面で確認してください。
自分の車両保険を使う場合
自分の車両保険から全損保険金を受け取る場合は、保険法や約款に基づき、保険会社が事故車に関する権利を取得することがあります。
保険金の支払い前に事故車を勝手に売却・解体すると、保険金の算定やローン会社との手続きに影響するおそれがあります。必ず保険会社の承諾を得てから処分しましょう。
全損で保険金が足りないときのよくある質問
Q. 同じ条件の車を買えない場合は必ず増額されますか?
必ず増額されるわけではありません。事故車両と比較車両の年式・型式・グレード・走行距離・修復歴・使用状態などが近いことを示す必要があります。
購入したい車が事故車両より新しい、走行距離が少ない、グレードが高い場合は、その購入価格全額が認められる可能性は低くなります。
Q. 相手方の賠償金と自分の車両保険金を両方受け取れますか?
両方へ連絡・請求できる場合はありますが、同じ損害について実際の損害額を超えて二重に受け取れるとは限りません。保険会社間で支払額が調整されたり、自分の保険会社が相手方に請求する権利を取得したりする場合があります。
どちらを先に使うか、等級や保険料へどのような影響があるかも含めて、自分の保険会社へ確認してください。
Q. 車両保険を使うと必ず3等級下がりますか?
事故の原因や使用する補償によって、3等級ダウン事故、1等級ダウン事故、ノーカウント事故のいずれになるかが異なります。「全損だから必ず3等級下がる」とは限らないため、受け取れる保険金と今後の保険料を保険会社へ試算してもらいましょう。
Q. すでに示談書へサインした場合はどうなりますか?
一度示談が成立すると、単に「金額が足りないと後から気付いた」という理由でやり直すことは非常に困難です。ただし、示談の成立過程に特別な事情がある場合など、個別の判断が必要になることもあります。
すでにサインしている場合は、自分だけで判断せず、交通事故の相談機関や弁護士へ早めに相談してください。
まとめ:保険金が足りない原因に合った対処をしよう
全損で保険金が足りないと感じたら、最初に不足の原因を確認しましょう。
- 相手方の時価額が低い:算定根拠と中古車市場を比較する
- 買い替え諸費用がない:車両価格と分けた見積書を提出する
- 過失・免責・残価が差し引かれている:計算前後の明細を確認する
- 自分の車両保険が足りない:新価特約や全損時諸費用特約を確認する
- ローン残高が多い:ローン会社へ一括精算額と返済方法を確認する
不足の原因が、相手方保険会社から提示された時価額の低さにある場合は、示談書にサインする前に市場価格との違いを確認することが重要です。
自分で適正な比較車両を選ぶのが難しい場合や、保険会社へ提出できる客観的な調査資料を用意したい場合は、KKリサーチの無料査定で、正式な車両価値調査を依頼する必要があるか確認できます。
※本記事は一般的な情報を提供するものであり、個別の事故について法的判断を行うものではありません。実際の賠償範囲、保険金、ローンの精算方法は、事故状況や契約内容によって異なります。